長い列

「これは どなたの お葬式 ですか」

凍りつく吐息の向こうに
天は無意味なほど明るく
透き通っていた

「ほら あの方の」

持ってきて
そこに置いたばかりの
ちんけな水車が
さっき通りすぎてきた
入り口のところで
ちょろちょろと水を受けて
回っていたが

「どなたの お葬式 ですか」
「ほら あの方の」

受付の世話で
淡々と働いているあの方の
どんなゆかりの
葬儀だというのだろうか
僕は考えながら
そのまま列に運ばれ
立ち止まっては
また一歩
思い出したように
進んで行った

「どなたの お葬式 ですか」
「ほら あの方の」

あれは
葬儀屋の人ではないのだろうか
手慣れた様子で
あれこれと
ことを仕切っているとも見えるのだが
考えあぐねて振り返ると
僕の後ろにも
果てしない列ができていた

「どなたの お葬式ですか」

踏みしだかれた落ち葉が
僕の足下に乱れている
だれの葬儀なのか
僕には依然
わからなかった
それなのに
列に運ばれているうちに
僕はいつしか
やり切れない悲しみの中に
なぜか沈み込んで
どうすることも
できなくなっていた
もうどうでもいい
どうでも
いいのだ

「ほら あの方の」

泣きそうになるのを
どうやら堪えて
僕はおもむろに
答えてやった
そうしてただ
また一歩
動いてゆれる
長い列

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