別れがテーマ

秘密

めぐみには 秘密がある 心に決めて 秘密にした 動かせない 思い

手紙

純粋な少女のくれた手紙を 古いノートの間に見つけた 私の書いた小さな詩を とても素敵だと言ってくれたのだ ためらいがないどころか あんまり素直に心を打ち明けていて 私はなんだか今にも 優しい気持ちを誘われてしまう あの娘

宛名書き

年賀状の宛名書きを パソコンで手伝ってやるのは ここ数年の私の習い 昨年の住所録を印刷して 母に渡してやると 一年前に頂いたお賀状の束と ひとしきり時間をかけて 照らし合わせている しばらくすると 私の部屋にやって来て

黄色の光

看板が斜めになり くすんだペイントの中にある黄色の 妙に鮮やかな光を放っているのが 実は君であるということを 僕はとうとう告げることなしに 今日まで時間を終えてきてしまった そうしてブリキの看板を きちんと立て直す術も持

亡命

彼の瞳に映る世界は未来へと確かに漸進しているはずなのだファシズムに立ち向かう彼の精神は恐ろしく崇高いではないか亡命を決意するまでの過程を今つぶさに振り返ろうともその叫びも沈黙も捧げた自己犠牲も全ては正義への願いに裏付けら

だるまと車掌

 奴の現在の在り方を、例えば「忘れられただるまさん」と言うことができる。人々の幸せを祈りながら、ただじっと、手も足も出せないまま黙っていることより、仕事はない。その上、いつの間にかだれもがその存在を忘れている、いつまでも

御坂峠

開けた景色が見たくなって BMWで御坂峠に行った 学生時代 太宰さんのいしぶみを訪ねた 富士山と河口湖の 大きな景観 真っ暗なトンネルの手前 なんだか淋しいような気になる あの 御坂峠 「月見草」の碑の前に立ったら 二十

流れ

流れながれて やがては僕のところを ふうという音を立て 去って行く水鳥たち ままならぬこの 太陽と月との 物理的な 真実の中

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