その9
その夕、家に帰らない子どもを捜しに出た主婦が、池のほとりで、三人の子どもが竹槍に刺されて死んでいるのを見つけた。辺りには、たくさんの竹槍が散乱していた。
警察の捜査は、全く停滞した。
「何をおっしゃいますの。うちの息子に限って、そんなことするはずがございません。警察に疑いをかけられたと分かったら、どんなにショックを受けることでしょう。感受性の強い子どもなんですよ。そういう年頃なんです。将来の人間形成にどんなに悪影響を及ぼすか・・・。刑事さんに責任がとれるんですか。
第一、お考えくださいな。あそこで村長の坊ちゃんが亡くなられたことは、うちでは息子にもちゃんと話してあります。それが、昨日なんですよ、昨日。
池に近づいてはいけないと諭したばかりなんです。よそのお子さんのように、親の言いつけを守れない子ではないんです、うちの息子は。
ですから、よそのお子さんから先に調べてくださいな。本当に警察の方ときたら、順序というものを知らないんだから。よそのお子さんを全部調べてみてくださいよ。それでも、犯人が見つからないというのなら、・・・・・・まぁ、そんなことはあるはずありませんけど、でも、そうしたらうちの息子を調べてくださっても結構ですわ。わかりまして。だから、よそのお子さんをお調べくださいまし。その方が早く事件は解決しますわ。
それとも、本当にうちの息子を疑っているとでもいうのですか。あなたがたのとんでもない勘違いで、子どもの生涯を台無しにされてはたまりません。迷惑です。親として責任を持って申し上げます。調べる必要なんて絶対にないはずです。」 (了)
>>>おことわり<<<
文中の方言はいい加減に作りました。