そこにはひとつの ガラス窓があって 向こうに景色が開けている あこがれていた景色は ずっとあの頃の通り 色褪せない うす暗がりから望む 景色の明るさは 永遠をたたえて無垢なままだ 窓のガラスには うっすらと僕が映り あこがれたまま 立ち尽くす姿も ずっとあの頃の通り 変わらない ガラス窓から 外の景色を眺めるうち 知らず知らず そこに映る自分自身を見つめて 絶望しそうになっていることが 僕にはよくある 「まだまだだ」 その言葉が 二つの意味で 葛藤する ガラス窓は なぜか汚れやすくて きれいに拭ってやらないと すぐに景色が見えにくくなる あんまり度々 こすって磨いているせいだろう ガラス窓には 骨董品じみた細かな傷が 無数にできてしまっている ガラス窓がやがて 手に負えないくらい 傷だらけとなり 僕の姿を 少しも映し出さなくなった頃 あこがれていた景色は いよいよ僕から 見えないものになるのだろう
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