自分の知らない 過去のあのひとと 自分しか知らない 過去の自分と どうして巡り会わなかったのか 考える 時間の流れを ずっとさかのぼって もっと早い瞬間から あのひとと 一緒でいられたならと 夢想する 出会う前の あのひ
いつか
そのまま 立ち止まらず 少しずつ進んで来て 私の前で 笑って欲しい
無理のある話
あなたは 巴御前にそっくりです そっくりとは言っても 巴御前の容姿など 私も見たことはありません 私の中にある そのイメージとの比較です 巴御前はその昔 木曽義仲が 自国から都に攻め登り 攻め落としてまもなく討伐軍に追わ
その日
本当は いつも寄り添っていたい 朝から晩まで 一日中 ずっと寄り添っていたい 隣にいるという それだけでなく 生涯に 果たしてどれだけ そんな風に一日中過ごせるものか 二つの心は 寄り添うどころか ある時ふと 不用意に姿
願い
めぐみは僕に お返しなんかくれるなという 素直に甘えられる幸せの傍らで お返しをしたい僕の願いが べそをかきながら 迷子みたいに立ちすくんでいる
秘密
めぐみには 秘密がある 心に決めて 秘密にした 動かせない 思い
魔界
悪魔さん どこにいますか? どこにでもいますか? いつからいますか? 魔界へ帰ったらどうですか? あなたが 隠れるの巧みなのは もう分かりましたから そろそろ魔界へ お帰りなさい とにかく魔界へ お帰りなさい 念のための
ポセイドン
夏は夕暮れ 透明なほど 肌の白い女が また頬を涙に濡らして 海辺に立った ゆりかごの 調べはカノン たれか知る 涙のゆくへ 風の伝ふる 静けきメルヘン 女は 遠くを見つめたまま 固く唇を 結びなおした それから な
決心
引力の てっぺんにある ああまでくすんだ 空の色 私は 息を凝らして また憎みなおす ああまで ひどい空の下に いつまでも あなたを 放ってなど おけるものか 大切なものが だんだんと駄目になる そんなこと どうあっても
幻想
幻想を 危うく持ってしまう所だった 少年の頃 いつもいつもそれで悲しみ 私はそれが 不当にもその持ち主をいたぶることに 絶えず苛立たしさを感じたのだった それから私は 次第に幻想という奴を 持たない癖になっていた それが