開けた景色が見たくなって BMWで御坂峠に行った 学生時代 太宰さんのいしぶみを訪ねた 富士山と河口湖の 大きな景観 真っ暗なトンネルの手前 なんだか淋しいような気になる あの 御坂峠 「月見草」の碑の前に立ったら 二十歳の頃に愛した人を どうして失ったのかと ついといたたまれなくなって 天下茶屋の山菜そばを喰い 元気になったようなつもりで 帰ってきたが
富士山
富士山には 随分たくさんの思い出がある 僕が富士山を好きなのは 数々の思い出の中に どっしりと富士山が座っている その偶然のためなのだろうか なかでも とりわけ強く僕を揺り動かす 八年前の二人の在り方と その背景にあるどでかい富士山 僕を押しつぶそうとする
秋
紅葉を待ち受ける木梢 仕事は終わりに近づいたとささやく木梢 天が澄んで懐かしいほどに ふと昔の夢が微笑みとなって うっかり口をつく僕の口癖 「これが潮時……」 冴えた空気と穏やかな陽光 コンチェルトみたいに戯れ合い それはそれは静かに流れる しかしね おまえたち そろそろ覚悟を決めておこうよな これからの風は いよいよ冷たくなっていく はじめから 決まりきってるんじゃないか
チョコレート
ひとかけの チョコレート。 甘美さと ノスタルジーと。