がテーマ: 詩

独り

独りであることを
詩にしてみようと思ったが
ならない
仕方がないので
それを詩にした

ある日の暮れ方

よどんだ夕空の下にある
交差点の信号あたり
僕の車は止まって順番を待ち
その中の僕はさっきの女との
たわいないやり取りを考えながら
薄暮の中に灯っている全ての電灯が
次から次にパンッパンッと音を立てて
割れ尽くしてしまえばいいような気がしている

街灯もテールランプも信号も割れて
ちかちか動く色彩の光が
不機嫌な空のあくびに飲み込まれちまうのを
息を凝らして陰謀するのだ

きっと清々するに違いないなどと思ってみるのだ
本当にそうだ
そんなことが起こったら
ちょっとは愉快に笑えそうな気がするのだ

無題

止まった空間には
凝縮された生命が放蕩を始め
瑞々しい若さで傾いてゆくのだ

止まった空間には
地球の運命が暗示され
無機的な笑い声が気味悪く響き
涼しい血のためには頭痛を容認する

止まった空間には
生活の一端が溢れ出し
純血のために捧げられた祈りが
さざ波となって静かに遠のいてゆく
いつしか自分の周りには
海だけがある

止まった空間には
永遠に明日が来ない
永遠に昨日のまんまに座り込み
今であることの価値は永遠に消失し
ついに人間がどうでもよくなる

パッションの傾斜する午後あたり
夏は音を立てて
静かな音ですが
音を立て崩れ落ちるのであります

ある朝に

僕の生み出せるものは
うんちくらいのものだ

いつになく
頑張ってみたところで
出来てきた作物はといえば
いつも同じにひょいとあり
そうして 勢いのある水なんぞに流されて
どこかへ溶けて消えちまう

僕にしてみたところでもう
金の卵は生めないことを知っているから
いちいちがっかりもしないけれど
時々考えてみたりする

こんなものにしても
喜んで受け容れる畑のひとつ
どこにかあるんじゃないかしらんと

そうでなけりゃ
僕だって鼻を
つまみたくさえなっちまう

みかん

みかんの
向こうに
山がある。

うさぎ

知ってるか
うさぎの
目は赤いの
ばかりじゃ
ないのだ

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