〈あのさ あのね〉 胸がどきどきして 全身の 隅から隅まで 一瞬のうちに フツーでは なくなってしまう 〈そうなんだ いつも〉 そんな自分を どうすることもできないで 一番 なって欲しくない時に しどろもどろ 持て余してばかり 〈やれやれ 参るね〉 少しも 成長してくれない 少年じみた頼りなさに あらゆる自信を なくしてしまいそうな 恋はどうにも 苦手なぼくだよ
症状
自分の知らない 過去のあのひとと 自分しか知らない 過去の自分と どうして巡り会わなかったのか 考える 時間の流れを ずっとさかのぼって もっと早い瞬間から あのひとと 一緒でいられたならと 夢想する 出会う前の あのひとの回想が 自分の姿を ちっとも 含んでいないことに 屈託する 未来のどこかで あのひとの世界から 忽然と 自分が消えてしまう自然に ふと しょげる これはもはや 手の施しようもない なんともひどい 症状だ
ごっちゃ
数学的な 何やら わけわからん内容と 君の頭の中で ごっちゃになってるんだね わたし
こころ
こころってヤツは 意志とか 理屈なんかより 自分が上等だと 思っているんだ きっと
無茶
君に伝えたい思いは いつも 同じ言葉になっちゃうんだが 気持ちはいつも新しくて いつも 少しずつ変わっている ただ 少しも変わりがないと言っても 別に おかしくはない そんな気もするんだから 全くもって無茶な道理だ
ガラガラ
このところ 風邪をひいても 酷使し続けているせいで 私の喉は 赤ん坊のあやし道具 「ガラガラ」 自分を まだ子供だとうそぶいては よくおどける 君をあやすのには 丁度よい道具かもしれないけれど 君が いつも聞いていたいと 願うくらいの魔法の声でも 出せたらいいのに 現実はどうにも 「ガラガラ」
その日
本当は いつも寄り添っていたい 朝から晩まで 一日中 ずっと寄り添っていたい 隣にいるという それだけでなく 生涯に 果たしてどれだけ そんな風に一日中過ごせるものか 二つの心は 寄り添うどころか ある時ふと 不用意に姿を現した 曖昧な隔絶によって ひどく 苛まれ続けたりする 愛することに挫けながら ついさっきの ほんの小さな出来事に やさしく助け起こされては また性懲りもなく 信じ直してみるんだ きっと あるに違いない 美しいその日
カタブツ
もっとも難しいのは 自分自身 というモノみたいだ 自由に上手く コントロールできると いいのに 半端とかなんとか くそくらえだ 我がままも 頑固さも ぶっこわれちまえばいい そんなことを考えつつ 自分自身に 諦めさせようと 努めているんだが これがまた難しくて カタブツなんだ
かぜ
なってみると辛い でも なるまで忘れてる 恋煩いと 同じ
いい加減
時間は限りあるもので 個人の持っている時間は確実に減っていく 常に意識しているほど 無意味なこともないけれど たまにはどうしても 思ってみなければならなくなる 《何をしている 時間は過ぎるぞ》 それは 自分の過去が 証明してくれただけでも十分なのに 現在という 唯一コントロールが及ぶはずのものまでが ある時すまして その事実を突きつけたりもする 《何をしている 時間は過ぎるぞ》 もういい とっくのとうにわかっている なんにしろ やるだけやってみるより他に ないんじゃないか たいがい行き当たるのは そんな程度の いい加減