時間は限りあるもので 個人の持っている時間は確実に減っていく 常に意識しているほど 無意味なこともないけれど たまにはどうしても 思ってみなければならなくなる 《何をしている 時間は過ぎるぞ》 それは 自分の過去が 証
長い列
「これは どなたの お葬式 ですか」 凍りつく吐息の向こうに 天は無意味なほど明るく 透き通っていた 「ほら あの方の」 持ってきて そこに置いたばかりの ちんけな水車が さっき通りすぎてきた 入り口のところで ちょろち
ポセイドン
夏は夕暮れ 透明なほど 肌の白い女が また頬を涙に濡らして 海辺に立った ゆりかごの 調べはカノン たれか知る 涙のゆくへ 風の伝ふる 静けきメルヘン 女は 遠くを見つめたまま 固く唇を 結びなおした それから な
ガラス窓
そこにはひとつの ガラス窓があって 向こうに景色が開けている あこがれていた景色は ずっとあの頃の通り 色褪せない うす暗がりから望む 景色の明るさは 永遠をたたえて無垢なままだ 窓のガラスには うっすらと僕が映り あこ
黄色の光
看板が斜めになり くすんだペイントの中にある黄色の 妙に鮮やかな光を放っているのが 実は君であるということを 僕はとうとう告げることなしに 今日まで時間を終えてきてしまった そうしてブリキの看板を きちんと立て直す術も持
大砲
ずどんと大砲が鳴ったあとの 僕の心の中を支配する余韻が しつっこくてやりきれない 頭痛のガンガンする痛みには もうあきらめもあるが しかし 僕の心の中を埋め尽くすもの 大砲の余韻が鳴り止まないのだ 大砲は僕の上にある未来
秋
紅葉を待ち受ける木梢 仕事は終わりに近づいたとささやく木梢 天が澄んで懐かしいほどに ふと昔の夢が微笑みとなって うっかり口をつく僕の口癖 「これが潮時……」 冴えた空気と穏やかな陽光 コンチェルトみたいに戯れ合い それ
音
パッションの傾斜する午後あたり夏は音を立てて静かな音ですが音を立て崩れ落ちるのであります
ある朝に
僕の生み出せるものは うんちくらいのものだ いつになく 頑張ってみたところで 出来てきた作物はといえば いつも同じにひょいとあり そうして 勢いのある水なんぞに流されて どこかへ溶けて消えちまう 僕にしてみたところでもう