人生がテーマ

秋の夕暮れ

金木犀の花の 潔い真剣さに後ろめたくて 宇宙がすすり泣いている けれん味のない沈黙がやがて ため息になりはしまいかと ついと悲しんでしまう 僕の習性 おびえにも似ている 僕などは まだまだいい方なのだと しきりに心で呟く

明るい蜃気楼がそっと遠のき ふと我に返ると 人々はその傍らに ほこりと蜘蛛の巣とかびの領分と化した 古臭いあばら屋を見出だすであろう まもなく それが自らの帰るべき住み処であったことを どこか見覚えのある調度から認めねば

仕事

雨のようなものでどっちみちなるようにしかならないのだがてるてる坊主を作ったり雨乞いの神事をしたりずいぶん熱心にやってみたりするのだからそれも大真面目でやってらんないくらい胸が痛むんだ自分の仕事の意義を何とか見つけ出さない

だるまと車掌

 奴の現在の在り方を、例えば「忘れられただるまさん」と言うことができる。人々の幸せを祈りながら、ただじっと、手も足も出せないまま黙っていることより、仕事はない。その上、いつの間にかだれもがその存在を忘れている、いつまでも

御坂峠

開けた景色が見たくなって BMWで御坂峠に行った 学生時代 太宰さんのいしぶみを訪ねた 富士山と河口湖の 大きな景観 真っ暗なトンネルの手前 なんだか淋しいような気になる あの 御坂峠 「月見草」の碑の前に立ったら 二十

大砲

ずどんと大砲が鳴ったあとの 僕の心の中を支配する余韻が しつっこくてやりきれない 頭痛のガンガンする痛みには もうあきらめもあるが しかし 僕の心の中を埋め尽くすもの 大砲の余韻が鳴り止まないのだ 大砲は僕の上にある未来

水辺で

源五郎の棲む池のほとりを 小さな竜巻(つむじかぜ)が訪れたとき 葦たちは穂先をなびかせて歌った 理不尽であればあるほど 風は期待を 唆(そそのか)すもので いわば竜巻などは 葦たちには夢みたいなものなのだ 葦たちの騒ぎ様

紅葉を待ち受ける木梢 仕事は終わりに近づいたとささやく木梢 天が澄んで懐かしいほどに ふと昔の夢が微笑みとなって うっかり口をつく僕の口癖 「これが潮時……」 冴えた空気と穏やかな陽光 コンチェルトみたいに戯れ合い それ

馬鹿

夢を追いかける人のきららかな表情を すっかり信じて微笑する 僕は馬鹿だよ ひたむきに行う人の 明るい顔を見ていると 悲しむべき僕の感情がついにはなくなり 嬉しいばかりの僕が出来上がって 得意になる 僕は馬鹿だよ 《「純粋

人生

へたをすると 馬鹿馬鹿しい芝居にだって 心の底から笑うようになる 心の底から泣くようになる あるいは どちらもできなくなる

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