無力がテーマ

別れ

一緒の時に 私たちをつなぐのは いつでも言葉だけだった そんな中 ほんの少しの思い出も いつのまにだか できていた イルカや和菓子やおむすびに あなたの笑い声を 思い出すだろう ローリンやベビーフェイスを耳にして あなた

甘味

そう そのことば できることなら 紅茶に溶かし込んで 一滴残らず 飲んでしまいたい 私の ありったけで 慈しみながら

「人魚とパチンコ」-挽歌ではなく-

 パチンコは歌う  遠くから歌う 遠い海で 人魚は岩の上にいて ハープの音色で船乗りたちを いつの間にやら虜にしていた パチンコは おいらの心の中にいて 妙に電気的な音楽と 明滅する光を繰り返し チリリリと落ちてくる豪奢

魔界

悪魔さん どこにいますか? どこにでもいますか? いつからいますか? 魔界へ帰ったらどうですか? あなたが 隠れるの巧みなのは もう分かりましたから そろそろ魔界へ お帰りなさい とにかく魔界へ お帰りなさい 念のための

無言

 i 僕は 何も言わない 何も 僕が言わない時 僕は 何も言いたくない そうでない時は 僕は 何も言えないのである たとえば 今のような あきらめきれない時などは  ii 無言の味は 羊羹に似ている 特に 食いすぎた時の

決心

引力の てっぺんにある ああまでくすんだ 空の色 私は 息を凝らして また憎みなおす ああまで ひどい空の下に いつまでも あなたを 放ってなど おけるものか 大切なものが だんだんと駄目になる そんなこと どうあっても

途上

飲んだっくれて 日が暮れて 誠心誠意 くれどおし しらばっくれて グレてみる 連れに逸(はぐ)れて 途方に暮れて 食いっぱぐれて 風が吹く そぞろ歩きの みちの上

ロミオとジュリエット

ジュリエットはロミオがロミオであることをどうしてと問い家を捨て名を捨ててくださいと願った互いの運命が不幸な前提のもとに始まったことをその時すでに知っていたからだ 僕は僕で自分が自分であることにどうしてと問うたことこそあっ

祈り

捧げられた「祈り」の分だけ人々の生涯は確かに幸せになってきたのだろうか 信仰というものがろくにないんだから仕方も無いが僕の場合にはどうにも祈りという祈りがいつもいつも無力だった気もする 祈りというのは限界にまで至ったとき

たぶん

世界中に毎日 絶滅している生物が たくさんあると聞くが その終わりはきっと 人知れず あっけないものなのだろう 終わってみれば 結構あっけないものなのだろう 終わったんだか 何だか よく分からないような ささいな 出来事

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