無題

あさがおの
これが
ふたばだよ

パッションの傾斜する午後あたり
夏は音を立てて
静かな音ですが
音を立て崩れ落ちるのであります

夕暮れ

あめ色の夕暮れを
見るうちに霧が深まり
そろそろ
昨日の幻想に
そのまま沈み込んでいた
悪魔の
ささやきが聞こえるころだ

六月

雨が上がり
空が明るんできたせいで
僕はなんとなく
無口の今を持て余している
僕の心は
なんだか
たまらなくなっているのに……

ほら
いつもと同じく働く僕は
サーカス小屋が
お似合いだ
サーカス小屋こそ お似合いだ

〈そらそら そこゆくお嬢さん
 お代は観ての お帰りだ
 観なきゃ損々 お入りな
 日本一の サーカスだ〉

日本一とはよく言ったもので
当たり前ぐらいのラッパが鳴って
嘘はつかぬと嘘ばかり

〈手前が道化を つとめます
 手前が道化で ございます〉

梢のところで
風が ほら
ほらほら 拍手をくれている

ある朝に

僕の生み出せるものは
うんちくらいのものだ

いつになく
頑張ってみたところで
出来てきた作物はといえば
いつも同じにひょいとあり
そうして 勢いのある水なんぞに流されて
どこかへ溶けて消えちまう

僕にしてみたところでもう
金の卵は生めないことを知っているから
いちいちがっかりもしないけれど
時々考えてみたりする

こんなものにしても
喜んで受け容れる畑のひとつ
どこにかあるんじゃないかしらんと

そうでなけりゃ
僕だって鼻を
つまみたくさえなっちまう

無題

湖と
涼しい
風と
僕と

ゲジゲジの最期

つるつるの床の上で
ゲジゲジは死んだ
それも
生物の先生によって
簡単に踏みつぶされたのだ

生物の先生は無意識である
ゲジゲジは不運である
よりによって
二つしかない足のそのひとつの
ちょうどよいタイミングを以て
ちょうどその置かれるはずの場所に潜り込んだのだ

ゲジゲジは
明らかに通過するつもりであったろう
一目散に走っているさなかに
それは僕が足でつついて走らせたのだが
数十本の細い足の筋肉・・・筋肉?
筋肉でも何でもよいが
それを最大限に動かしながらの
命懸けの逃亡であった

僕からは逃れた
そして数メートルだけ命を永らえて・・・永らえて?
永らえたのか何か知らないけれど
不運に遭った

つるつるの床の上に
ゲジゲジの死が
つぶれていた

無題

いったい
どこで
いったい
何に
つまずいて
しまったのだ

無題

ひょっとこ
の
憂ひ

無題

ろばのみみ
に
ねんぶつ

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