地鳴り

眠気によっても 僕の宇宙への思いは何も 何ひとつも変わらず深刻なのだ 間もなく意識は薄れながら 今日の雑多ながらくたを遥か 向こうの山陰に埋め葬ろうとしている そうして僕の世界はまぶたの中で ようやく色彩を取り戻し始め

黄色の光

看板が斜めになり くすんだペイントの中にある黄色の 妙に鮮やかな光を放っているのが 実は君であるということを 僕はとうとう告げることなしに 今日まで時間を終えてきてしまった そうしてブリキの看板を きちんと立て直す術も持

晩夏

夏の終わりには かみなりが虚勢を張って 「てやんでいっ!」 てなもんで自分を誇示する そんな時は 分かってやるに限る 分かってやるに!

明るい蜃気楼がそっと遠のき ふと我に返ると 人々はその傍らに ほこりと蜘蛛の巣とかびの領分と化した 古臭いあばら屋を見出だすであろう まもなく それが自らの帰るべき住み処であったことを どこか見覚えのある調度から認めねば

亡命

彼の瞳に映る世界は未来へと確かに漸進しているはずなのだファシズムに立ち向かう彼の精神は恐ろしく崇高いではないか亡命を決意するまでの過程を今つぶさに振り返ろうともその叫びも沈黙も捧げた自己犠牲も全ては正義への願いに裏付けら

仕事

雨のようなものでどっちみちなるようにしかならないのだがてるてる坊主を作ったり雨乞いの神事をしたりずいぶん熱心にやってみたりするのだからそれも大真面目でやってらんないくらい胸が痛むんだ自分の仕事の意義を何とか見つけ出さない

しろつめ草

校庭の片隅で見つけた幸運の小さな象徴(しるし)「ほら 四葉のクローバだよ」「クローバ? 四葉の? ほんとだ!」「あげるよ」「わあ ありがとう」初夏のうららかな昼休みは清々するくらい明るくて綺麗だ 明るくて綺麗な昼休みであ

だるまと車掌

 奴の現在の在り方を、例えば「忘れられただるまさん」と言うことができる。人々の幸せを祈りながら、ただじっと、手も足も出せないまま黙っていることより、仕事はない。その上、いつの間にかだれもがその存在を忘れている、いつまでも

ゆりかご

ゆりかごに揺られながら 僕はうっとりとしている 君の指の白さを眺めて どうしてあんなものが 自然によって生まれてくるのだろうなどと 呑気に思っている間 僕の中には 君の不思議がたくさんみなぎって 僕を満たすのだ ゆりかご

御坂峠

開けた景色が見たくなって BMWで御坂峠に行った 学生時代 太宰さんのいしぶみを訪ねた 富士山と河口湖の 大きな景観 真っ暗なトンネルの手前 なんだか淋しいような気になる あの 御坂峠 「月見草」の碑の前に立ったら 二十

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