欠片(かけら)

たくさんの
いただきものを
寄せ木細工のように
組み合わせて
私の全体ができている

一つ一つの欠片を
どなたからいただいたものか
見分けようにも
まるでお手上げの
だらしない
始末だけれど

宛名書き

年賀状の宛名書きを
パソコンで手伝ってやるのは
ここ数年の私の習い

昨年の住所録を印刷して
母に渡してやると
一年前に頂いたお賀状の束と
ひとしきり時間をかけて
照らし合わせている

しばらくすると
私の部屋にやって来て
出す人とそうでない人
小さな印でよりわけた住所録を
遠慮がちに私に差し出す

私が受け取ろうとのぞき込むと
「この先生、死んじゃった
 いい先生だったのに」
指先で一つの名を押さえてつぶやくと
母は急に涙ぐんで
それなり逃げるように
背中を丸めて部屋を出ていく

乙女なりし母の
涙をすすりあげる声が
なおも静かに聞こえつづける

心を
切り刻んで
細かく
切り刻んで
ある時ふと
紙ふぶきのように
それを一斉に
空(くう)に舞わせたところに
それは生まれたのだろう

純粋な魂を
粉々に
切り刻んで
紙ふぶきのように
散らせたなら
それはきらきらと
瞬間の輝きを放ちながら
切り刻まれた永遠となって
静かに降り積もっていくわけだ

ここ

今
ここに
いること
やがて
ここから
いなくなること
この二つは
初めから交わされている
太陽と月との
動かせない約束だ

だからこそ
ここにいるうちに
やった方がいいことの
全部をやっておくとしよう
ここからいなくなる前に
自分のありったけを
傾けておくとしよう

そうすれば
僕らは きっと
たくましく前へ
進んで行けることだろう
ここにいた
ひたむきな自分を
かけがえのない
宝物として

山茶花

冬
真っ直ぐに続く
一本の道を歩み疲れて
そろそろ気の遠くなりそうな心に
傍らの山茶花の花が
ほうと灯を灯す

なぜ
こんな季節を選んで
花を咲かせるのだろうと
ちょっと勇気みたいなものが
ほうと灯を灯す

壊れた独楽

壊れた独楽
壊
れ
独楽でもそれなりに回る
なんだか自分が回っている
ようでこんなものさえ
捨てられない
で
い
る
壊れた独楽タイトル

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