止まった空間には 凝縮された生命が放蕩を始め 瑞々しい若さで傾いてゆくのだ 止まった空間には 地球の運命が暗示され 無機的な笑い声が気味悪く響き 涼しい血のためには頭痛を容認する 止まった空間には 生活の一端が溢れ出し 純血のために捧げられた祈りが さざ波となって静かに遠のいてゆく いつしか自分の周りには 海だけがある 止まった空間には 永遠に明日が来ない 永遠に昨日のまんまに座り込み 今であることの価値は永遠に消失し ついに人間がどうでもよくなる
女生徒
空が暮れて さっきからしきりに 僕を誘っている。 ずいぶんと色っぽいじゃないか。 僕は心の中で呟き そのまんま座っている。 そうして空はどんどん 暮れてゆき もはや闇は 少しも僕を誘わない。
無題
「風車ってどうして回るのかな」 「だって回らないじゃ淋しいじゃないか」 「でもこの風車回らないよ」 「きっと淋しいんだよ」
無題
遠くを見るにはこうしろと ひまわりは背伸びする。 僕は思わず嬉しくなって にこにこと笑ってしまう。
無題
あさがおの これが ふたばだよ
音

パッションの傾斜する午後あたり
夏は音を立てて
静かな音ですが
音を立て崩れ落ちるのであります
夕暮れ
あめ色の夕暮れを 見るうちに霧が深まり そろそろ 昨日の幻想に そのまま沈み込んでいた 悪魔の ささやきが聞こえるころだ
六月
雨が上がり 空が明るんできたせいで 僕はなんとなく 無口の今を持て余している 僕の心は なんだか たまらなくなっているのに…… ほら いつもと同じく働く僕は サーカス小屋が お似合いだ サーカス小屋こそ お似合いだ 〈そらそら そこゆくお嬢さん お代は観ての お帰りだ 観なきゃ損々 お入りな 日本一の サーカスだ〉 日本一とはよく言ったもので 当たり前ぐらいのラッパが鳴って 嘘はつかぬと嘘ばかり 〈手前が道化を つとめます 手前が道化で ございます〉 梢のところで 風が ほら ほらほら 拍手をくれている
ある朝に
僕の生み出せるものは うんちくらいのものだ いつになく 頑張ってみたところで 出来てきた作物はといえば いつも同じにひょいとあり そうして 勢いのある水なんぞに流されて どこかへ溶けて消えちまう 僕にしてみたところでもう 金の卵は生めないことを知っているから いちいちがっかりもしないけれど 時々考えてみたりする こんなものにしても 喜んで受け容れる畑のひとつ どこにかあるんじゃないかしらんと そうでなけりゃ 僕だって鼻を つまみたくさえなっちまう
無題
湖と 涼しい 風と 僕と