自分という存在に
時々自信がもてなくなる
ふと
心細くなる

これはそう
きっとアレだ
片思いの時の
いつものアレだ

鼓動

〈あのさ あのね〉

胸がどきどきして
全身の
隅から隅まで
一瞬のうちに
フツーでは
なくなってしまう

〈そうなんだ いつも〉

そんな自分を
どうすることもできないで
一番
なって欲しくない時に
しどろもどろ
持て余してばかり

〈やれやれ 参るね〉

少しも
成長してくれない
少年じみた頼りなさに
あらゆる自信を
なくしてしまいそうな
恋はどうにも
苦手なぼくだよ

だれか

もう終わりかもしれない
時々急に
そんな思いに襲われて
考え込むことがある
いずれ忘れてしまうんだから
初めからあまり
考えないですますほうがいい
と分かっていても
なかなかそれでは収まらない

考えることがなくなるまでは
ひとまず考え尽くしてみるよりない
そうするうちに
だれかが何とかしてくれる
はずもなく
だれかは何ともしてくれない
と分かる頃に
大概どうでもよくなっている

内なのか
外なのか
どこなのか
何とかしてくれるだれかは
ちゃんといる
気付かぬくらいに物静かなくせに
抜かりなく
優しいだれか

失恋

絶望に
打ちのめされた魂は
修復のため
あれこれ施される
すべての急場の修繕まで
少しも喜ばず
徒労に変えて
しきりに
震える

そういう
本物の恋をした

問い

本当にこうするより
他に方法はなかったのだろうか
そんな考えが
私の中で渦巻いて消えない
悲しくて
悲しくて
悲しくて
ありったけの自分が
問い続けてやまない
君は
今頃どうしているんだ

ネット恋愛

最後まで
生身の人間として
扱ってもらえなかったことを思うと
今にだって涙が出てくる
思わなければよいと言われても
そのことばかりは
いつも思われてならない
この存在は最後まで
電気的信号に過ぎなかったのかと
自分を憐れんで
ひたすら無口に
うづくまる

別れ

一緒の時に
私たちをつなぐのは
いつでも言葉だけだった
そんな中
ほんの少しの思い出も
いつのまにだか
できていた

イルカや和菓子やおむすびに
あなたの笑い声を
思い出すだろう
ローリンやベビーフェイスを耳にして
あなたの声を
懐かしむだろう
どこかで多喜二の名に会えば
やっぱりあなたを
考えるだろう

五月には
私のこの動揺と併せて
誕生日ごとに
亡くなった両親に
詩をこしらえて送る
心優しい女性がいたことを
私はきっと思うだろう
果たされなかった約束も
とても全部は忘れられない

二人の出会いが生んだ詩も
不細工な思い出として
古びてほこりを被るのだろう
せめては
ほんの慰みに
「小箱」の奥に
そうっとしまって
大事に愛おしみ続けるとしよう

症状

自分の知らない
過去のあのひとと
自分しか知らない
過去の自分と
どうして巡り会わなかったのか
考える

時間の流れを
ずっとさかのぼって
もっと早い瞬間から
あのひとと
一緒でいられたならと
夢想する

出会う前の
あのひとの回想が
自分の姿を
ちっとも
含んでいないことに
屈託する

未来のどこかで
あのひとの世界から
忽然と
自分が消えてしまう自然に
ふと
しょげる

これはもはや
手の施しようもない
なんともひどい
症状だ

いつか

そのまま
立ち止まらず
少しずつ進んで来て
私の前で
笑って欲しい

ありのまま
好きになってくれる
愛おしい
奇跡
いつも
勇気づけてくれる
優しい
奇跡

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