一番星

冬の木立に風が吹く
一番星の輝きだす頃
お日様に取り残されて
男はとうとう
肩をすぼめて立ちすくむ

野良猫がにゃあと鳴き
その瞬間に振り向いた男の
疲れた視線は魔法となって
野良猫を見事に射止める

互いに見つめ合うのは
男と女
ではなく
男と野良猫

猫の立派な長いひげに
ひゅるるぅとまた風が吹くと
男のそり残しの情けないひげにも
ひゅるるぅとまた風が吹く

それもまもなく
男は猫にさえまた取り残される
なんとしようにも
一番星は金星なのだ

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