(1994.8.8登頂)
利尻山、標高1712m。利尻富士とも呼ばれる。海抜0mから自分の足で登ることになるため、結構きつい。それなのに、普段、登山などしたことのない私は、この時、無謀にもこの登山にチャレンジしてしまった。前日の朝まで登るつもりはなかったのだが、YHに同宿する若者たちの計画に便乗したのであった。
大して若くない自分に、私が不安を感じたのは言うまでもないことであったが、今後体力が衰えることこそあれ、向上する見込みはなかろうと、駄目なら途中で引き返すつもりで登山することを決意した。一人で旅をしていた私にとって、それに合わせて旅程を変更するのは、予定通りに行動するのとほとんど同じ事であった。
その時の私の持ち物は、山を登るにはひどく軽装であったが、同行する若者たちは、だれもが同様で、取りたてて気にもならなかった。ふもとにある最初で最後の水場「甘露泉」で汲んだ水2リットル、朝食の分の振り替えとして、前夜のうちに用意してもらっていた握り飯3つ、後はタオル一本とカメラだけであった。日ごろ、登山に備えての訓練などしていない私には、むしろ、これ以上の荷物を携行するだけの体力はなかったというのも事実であった。
前日は、雨が降り、強風が夜遅くまで吹き荒れていたので、計画を断念せざるを得ないかもしれないと、寝床に入ったあとまで、だれもが考えていた。ユースホステルに宿泊する若者は、概して怖いもの知らずで無謀なチャレンジをするのだが、悪天候の中を登山しようというほど愚かではなかった。出発時の天候を見てから決行するかいなかを判断することにして、われわれは早めに眠りに就いた。