知恵の輪

知恵の輪にかかりっきりだ
本当は
永遠にはずれないさだめの
インチキの知恵の輪なのかもしれないのだ
いつか ふとしたはずみに
自然のようにはずれるような気がするのだが
今のところは一向駄目だ
インチキの知恵の輪なのかもしれないのだ

だれが仕掛けたいたずらなのか知らず
気づいたときにはもう握っていた
幼い僕は手の中にある
時代遅れなそのおもちゃで
無心に遊び始めていた

力を入れて あるいは抜いて
引っ張ったりひねったり押したりもした
いろんな角度も試してみたし
あらゆる姿勢でやってもみた
時折は その時が来たかと思ったこともあったが
それは単なる思い違いで
やっぱり結局駄目だったのだ

この知恵の輪だけはどうにもいけない
いくらやっていてもはずれない
いっそやめちまえば良さそうなものだが
そうもゆかない やめられないのだ
おふくろのお腹の中にいたときにさえ
もうしっかりと握られていたのではなかったかと
僕には思われるのだ
この知恵の輪が僕のものだから
はずすのも僕でなければならないのだ

何はどうとあれ
やめられないのだから たちが悪い
何はどうとあれ
知恵の輪にかかりっきりだ

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