思い詰めた少女のように けなげに僕の胸を飾っていた 小さな瑪瑙のタイどめを /メノウ 僕はとうとう 守り切れなかった 平穏な時にほど何かが起こる 倦んでいる退屈の向こうから のっしのっしと あの大男はやって来た 大男は乱暴だ 乱暴者だ 片手が僕の胸ぐらを掴むと おお もう一方の手が 僕の大切な瑪瑙のタイどめを 奪い取ろうと伸びてくる 奪い取られるものかと 抗い もがいても 大男の力は強大だ むやみなくらい強大だ さんざんいたぶられた末に 僕はあえなく倒されてしまう 瑪瑙を手にとると 大男は僕をうっちゃって ゆっくりと向こうへと 遠くへと離れて行った 取り残されて ずっと僕は座り込んでいた 何がいけなかったのか 愚にもつかないことを思っては 涙をこぼした いつしか 瑪瑙のあった胸元に つゆ草の花が寄り添って 僕をやさしく気遣っていたが 僕にはそれさえ またあの大男に 狙われはしまいかと 気になり始めているのだ
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